Ghetto Schule

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息子の通っている学校の評判はすこぶる悪い。息子が学校に通いだす時、近所の親切なおばさんが『あそこの学校だけは避けた方がいい』と忠告してくれたぐらいだ。その理由の一つが,異常に外国人の比率が高いことだ。それもあってか暴力事件や盗難事件、薬物の使用とかの問題がいろいろ起きている。
まず最初に説明しなければならないのは、ここでいう外国人とはスイスの国籍を持たない者(例えば僕)のことではなく,国籍はスイス人でもそのルーツが外国の人のことだ。つまり,A:両親ともにスイス人の子供、B:片方の親がスイス人の子供、C:両親が外国人でスイス国籍の子供 D:スイス以外の国籍の子供。と考えるとBとCとDだ。つまりスイスのパスポートを持っているが,ルーツが外国というスイス人も,外国人とカウントする。Bの場合はその判断が難しいが,僕の息子など外見上ではスイス人とは認識されないだろう。
小学校の時息子のクラスは約20人のなか両親がスイス人の子供は一人しかいなかった。中学校の今のクラスはもう少し多いはずだが,それでも数えるのは片手で充分足りるはずだ。それでも,息子の知っている限りスイスのパスポートを取っていない子供は少ししかいないということだ。つまり、スイス国籍ということであるなら,ほとんどはスイス人の生徒ということになるはずなのだが。
それでは実際に学校の状態はどうなのか?息子の話しでは、休み時間に殴り合いの喧嘩はよくあったそうである。小学校のときは週に1回ぐらい喧嘩があったと僕たちに話していたのだが,中学になって全然聞かなくなったので,尋ねてみるとあまりに頻繁に起こるので気にしなくなったそうだ。また、盗難や器物破損もよく起こり,その度にパトカーがやってきたそうで,犯人特定のため全校生徒の指紋も取られたそうだ。たまたま息子のクラスはその時スポーツの授業で校舎にいなくて息子自身は取られなかったそうだが。
あと,僕が驚いたのは煙草の更生プログラムがあり,申請すると摂取量を減らしていくと言う同意のもと指定の場所で喫煙が許可されているそうだ。つまり隠れて吸うのではなく,公然と喫煙出来るそうだ。もっともそれをしているのは一人だけで,あとの喫煙している生徒は,日本同様隠れて吸っているそうだが。実は,教師は生徒が喫煙している場所を把握しているのだが,問題になるといろいろと面倒なのであえて見て見ぬ振りをしているとのことだ。ジョイントを吸っている生徒も結構いるそうで、煙草を吸っているよりもジョイントを吸っている生徒の方が多いぐらいだ。というのもたくさんの子がジョイントよりもむしろ煙草の方が健康によくないと思っているからだ。また、この前小学校のときの息子のクラスメートが急性アルコール中毒で病院に運び込まれたそうだ。
一方,教師の方もユニークな先生が揃っている.息子の一番のお気に入りの音楽の先生は,スキンヘッドにそり上げていて,両腕には大きな入れ墨が入っている。まあ,スイスではTattooはごく当たり前なのだが,それでも学校の先生でTattooをおおっぴらに見せびらかせているのは珍しいだろう。
息子は授業を受けたことがないのだが,髪の毛を伸ばしていつも薄汚れたTシャツにジャージというヒッピー風の先生もいる。彼は,真冬でも裸足で学校に通ってくるそうだ。夏場にはだしで歩いている人はよく見かけるが,雪の積もる氷点下10°C以下の気温で裸足で歩いている人は僕は他に見たことがない。よくぞそんな人が教師として採用されたものだと感心する。
息子がそんな学校に通っているなんて,「これを歌にしない手はない」とずっと思っていたのだが,あまり息子が乗り気でなかったので,長らくそのままになっていた。昨年学校設立20周年記念のイベントが開かれ,僕と妻も息子の学校に足を運んだのだが、このときの校長先生が「我が校は評判の悪いゲットーの学校では決してありません....。」とスピーチを始めた。その時「Ghetto Schule」という言葉を聞いて,僕の頭の中に光が走った。翌日30分ほどで書き上げたのがビデオの曲である。息子は,ドイツ語の訳を付けるのをかたくなに拒否し,絶対に学校にばれないようにしろと言った。こんなテキストの曲を歌っているのがわかったら先生から文句を言われるとビビっていたのである。
そのくせそのあと息子が自分で作った曲,「Oben auf dem Hügel」の方では僕の曲より過激な歌詞を付けて何度も先生たちの前で歌っているのだが。