卒業

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僕の息子もはや15歳となり,この夏で中学校を卒業する。

これからの進路について息子はいろいろ悩んだあげく、結局高校には進まずに木工の資格を取ることに決断した。スイスの場合、中学校が終わったあと,4分の3くらいの子供は何らかの資格を取る道を進んで行く。15歳で自分の将来を決めるなんて、日本ではちょっと考えられないのだが、この国のシステムではそうなっている。そんなわけで,この夏以降は,僕たちの生活にも大きな変化がありそうだ。

息子とは,幼稚園に行く前から音楽を続けてきた。最初は,鍵盤楽器のメロディカから始まり,リコーダー、ハーモニカ、ウクレレ、ギターと進んできた。2人で、あるいは妻を加えて3人で路上を含めホームパーティー、結婚式,コンサートといろんところで演奏してきた。そんな僕の息子に対しての音楽教室の方も,ひとまず「卒業」ということにしようと決心した。息子にそのことを伝えると,少しためらったみたいだが,いちおう納得していたようだ。

息子が生まれて,何を伝えたいか考えた時,「音楽の楽しさ」を伝えることが出来ればと思った。まあ,僕自身がちゃんとした音楽教育を受けたわけではないのだが、自分ではそれなりに目的は果たせたのではないかと思っている。先日ちょうど学校で,自主プロジェクトというう課題があり,息子が選んだテーマが,「自分で曲を作り,全ての楽器を演奏して録音し,その上でその曲のミュージックビデオを作る」と言うものだった。まあ,いつも僕がやっていることなのだが,今回は,僕はノータッチでほぼ一人で完成させた。

曲の出来映えは,僕のオリジナルの二番煎じ的な感じもするのだが,自分の学校についての歌ということもあり、学校の行事のたびに演奏させてもらった。ビデオの方は,学校のホームページにも乗せてもらうそうだ。
僕も何回か息子のステージを見に行ったのだが、なかなかボーカルもギターも様になっていて,それなりにカッコいい。それを見て,なんか自分の役割もひとまず終わったような気がした。

もちろんこれからも息子とは一緒に音楽を演奏して行くわけだが,僕が先生として教えるという関係は、とりあえずひとまず終わらせようと思う。とは言え,いつか彼がフィンガーピッキングのギター,それに尺八や二胡などの民族楽器などに興味を持った時にはまた僕が教えることになりそうなのだが。

実はほんの少し前までは,息子が音楽を続けていくのかどうかすら確信を持てなかった。音楽をはじめた動機自体が本人のものではなく,親の意向であり、彼が気が付いた時には既にギター弾いていて,ほとんどの人から「小さいのに上手いね。」と褒めてもらっていたからだ。もちろん,小さいときはクラスメートの誰よりも音楽が得意で,褒められてばかりなので,本人としては悪い気がするはずもなく,ただ続けてきたようにも思えた。息子自身の意思なのか?あるいは親の希望なのか?確信を持てるまで10年以上かかったわけである。

少し前にようやく自分で初めてのエレキギターも購入し,(今までは僕が用意してしまっていたので)学校のバンドも掛け持ちで3つこなし、音楽の先生からドラムを3年間習い,という姿を見ていて,音楽をしているのは僕の影響ということもないだろうとようやく確信出来たしだいだ。

息子の僕からの卒業であるとともに,僕も子育ての一部からの卒業でもある。

Toshi's Music
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