狐神楽プロジェクト

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以前に書いたDIOさんとのプロジェクトで、狐神楽がある。これはDIOさんの娘さんのラムちゃんのコントーションパフォーマンスに僕が音楽をつけるというものだ。
DIOさんとは,獅子舞や,三味線2本の演奏,などこの他にもいろいろアイデアはあり,それらのプロジェクトは同時進行中であるが,この合同狐神楽の方は,実際に大道芸をしながら試行錯誤している。
僕とDIOさんたちは,結構以前からテスト的に一緒に路上パフォーマンスを行ってきた。僕の持ち曲で合わせてみたり,二胡のインプロビゼーション、あるいは尺八のソロで。ラムちゃんと僕と二人で,あるいは,DIOさんも加わって3人で。そうこうしているうちに,僕の息子の正志とラムちゃん,アジア系の子供二人でのパフォーマンスはどうかな?というアイデアが湧いてきた。
しかしながら,現地点で,正志が一人きりで楽器をインプロビゼーションによりラムちゃんのパフォーマンスに合わせるというのは出来そうにないので,選択肢として、プレーバックを使いその上に正志がメインの楽器を演奏するか,あるいは僕と二人で演奏するということになった。
実は,プレーバックのトラックのテスト録音は開始したのだが,沖縄三線をメインの楽器として4分半の音楽にするには,少しきついことに気がついた。もちろん,正志に超早弾きなどのテクニックがあれば,話しは別だが,限られたテクニックでとなると難しい。そんなわけで,レコーディングトラックは途中で頓挫してしまった。
残るは僕と二人での演奏だ。正志の三線は,基本パターンを用意しておいて、それに正志自身の判断でバリエーションを加えるということにして,僕がその上に二胡,あるいは尺八でメロディーを演奏するという構成にした。
さて,正志の春休みに,皆で試してみる機会が訪れた。正志とラムちゃんの春休みは,どちらも2週間なのだが,期間が少しずれていて,ラムちゃんは午前中は学校で,そのあとお昼からBaselの街中での待ち合わせ、ということになった。
正志は,初めてラムちゃんとの競演とあって緊張気味、DIOさんから「少し顔が引きつっているんじゃない?」とからかわれていた。
僕は,最初の1回目は尺八で,次に二胡でメインのメロディーを演奏した。そのあと,皆でどちらがいいかな?と話し合った。DIOさんは,二胡,ラムちゃんは,尺八がいいという。僕は,両方の意見を取り入れて、楽器を持ち替えて演奏することにした。前半は二胡,後半を尺八。
そのパターンでまた3人で開始した。DIOさんは,ディレクター兼、ビデオのカメラマン。
この日、正志の一番気になったところは,パフォーマンスのあとラムちゃんが,お金を集めに行くときだ。何をしていいのかわからない,という感じでぼんやりと突っ立っている。ちゃんとお礼の言葉も言わないし,お辞儀するわけでもない。
この日のビデオを家に帰ってから見て、僕自身もどうしたらいいパフォーマンスになるだろうかと考えた。
DIOさんから僕への宿題は,オープニングに正志が何かソロでも弾けないか,ということだった。僕としては,ラムちゃんが,動き始める前に「何が始まるのか?」という期待感を高める何かを入れればいいのではないかなと思った。
そこで、普通エンディングに使う,ジャカジャカジャンというやつを正志が三線でかき鳴らし,僕がDIOさん自作の鈴を鳴らす。これで通行人は否応でも注目するに違いない。ついでだから僕はもったいぶって腕を上に差し上げながら鈴を鳴らし,「イヨーッ」と正志と一緒にかけ声を発する。そして正志が「もののけ姫」のメロディーを5秒ほど弾いてパターンに入り、僕のかけ声の合図で二胡とラムちゃんが同時に入る。こんな風に一応宿題を済ませた。
そして正志には,お辞儀の仕方を示し,お金を集めるのはラムちゃんに任せて,いつもDIOさんがしているように後ろに立って、「Danke」とお礼の言葉を言うように教えた。
次の土曜の午後,また皆で一緒にやる機会が来た。

ラムちゃんに,僕が合図するまで動かずに固まっていてねと頼み,さて開始。
でも、前日の打ち合わせだけなので,正志と僕の息が合わない。正志は、順番をちゃんと覚えていなし,いや,僕もちゃんと覚えていない。でも,ラムちゃんが動き出せば,彼女が人を引きつけてくれる。人垣が出来ているときのラムちゃんの気迫は,人がまばらなときとは全然違い,後ろで演奏している僕にも伝わってくる。
この日は,正志の服にも少しは気を使い,ラムちゃんのコスチュームと合うように黒と赤のを着せた。少しはビジュアル的にも絵になるだろう。パフォーマンス後のシャポー(お金を集めること)も正志はそれなりにこなしたので、今回は違和感なくうまくいった。
休憩を兼ねてのミーティングで,この日のディレクター役のDIOさんから,「つなぎの部分が急激すぎて,浮いた感じになっている。もう少しなだらかに移行できないか?」という指示があった。そこで、正志に音量のコントロールを気をつけるように言って,僕の楽器の持ち替えのタイミングを少しずらしてみることにした。
DIOさんは,ラムちゃんにも細かい指示を出している。僕には,よくわからないが,普段よりも走りすぎているらしい。タメの部分で充分に時間が取れていないとのこと。もちろんラムちゃんは,普段決まった音楽に合わせてパフォーマンスしているのだから,その音楽を合図として動いている。それが僕たちとでは,ラムちゃんが主導で、僕たちはラムちゃんの動きに合わせて演奏している。彼女にとっても新しい試みだ。
もちろん正志にとっても,こういう演奏は,今までやったことがないものだ。いつもは決まった曲を演奏しているのであり,間違わずに正確に演奏するというのが主眼になるのだが,ラムちゃんとのパフォーマンスでは,彼女の動きを見ながら、それにあう音を出すという,インプロビゼーションに近い演奏を要求される。それに自分が主役ではなく、脇役として,主役であるラムちゃんを引き立たせるという役割を果たすこともいい経験だと思う。
この日最後のパフォーマンスをDIOさんがビデオに撮ってくれた。ラムちゃんは最初から狐のマスクを外しての演技だ。これがここにあるビデオである。
DIOさんは,途中で子供たち同士のアイコンタクトや何か一緒の動きがあればいいかな,と言っているし,僕は僕で,音楽的にどこか聞かせどころを作ろうかな、などとかんがえている。
そんな感じで,このパフォーマンスは、まだまだ試行錯誤の段階で,改良点があるどころか,またはじめからやり直そう,などということになるのかもわからない。でも,こうしてDIOさんたちと一緒にわいわいと一つのものを作り上げて行くのは,本当に楽しい。